不動産の取得時効と登記
A=占有開始時の登記名義人
B=占有者
C=第三者
■Aから見た取得時効
Bは甲土地を自己所有のものと過失なく信じて占有を開始した。5年後にAはBに対し、甲土地を明け渡すよう裁判によらずして催告(民153条)した場合Bがそれを承認しない場合は、催告後6ヶ月以内に改めて裁判上の請求を行わないと時効は中断されない。
※催告の後の確定判決や裁判上の和解・調停などによって確定したときは、訴訟提起時ではなく、催告時に遡り時効中断する。
※「裁判上の請求」とは、請求訴訟だけでとは限らずに、裁判所の判断の対象となり判決の主文に書かれたものも含む(民147条1号、148〜153条)
■Bから見た取得時効
1 CがBの取得時効前にAから甲土地を買い受けた場合には、Cの登記がBの取得時効完成の前であると後であるとを問わず、Bは、登記がなくても、時効による甲土地の所有権の取得をCに対抗することができる。(Cの登記がない場合・最高裁・昭和41.11.22)(Cの登記がある場合・最高裁昭和42.7.21)
2 CがBの取得時効後にAから甲土地を買い受けた場合には、Aによって二重譲渡がされたと同じように考えて、Bは登記がないと、時効による取得をCに対抗することができない。先にCが移転登記をしてしまうと、もはやBは時効取得を主張できない。(大審院・大正14.7.8)
ただし、Cが移転登記をした後も、Bが占有し続けて取得時効に必要な期間が経過すれば、再び時効をCに主張することができる。(最高裁・昭和36.7.20)
3 農地法と時効取得とは無関係。農地法の許可がなくても自主占有して取得時効に必要な期間が経過すれば、取得時効は完成する。
4 隣接地の土地の一部を時効で取得した場合には、その時効取得した部分を分筆し所有権移転登記手続をしなければ、所有権を取得したことを第三者に対抗することはできない。(最高裁・昭和33.8.28)