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■占有権
■占有権の種類
■占有権の取得
■占有訴権

■占有権

占有権とは、物を事実上支配する状態(占有)そのものを法律要件として生ずる物権である。

■占有権の種類

占有は、占有している人がどのような意思を持って物を所持しているかにより、自主占有(取得時効が認められる)と他主占有(取得時効は認められない)に大別される。

1 自主占有 (民180条)(取得時効が認められる)

占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。

2 他主占有(取得時効は認められない)

所有の意思がなく物を所持する場合(他人の物を預かったり、借りたりする場合)

<他者の占有権を利用する場合>

代理占有(民181条)(取得時効が認められる)

占有権は、代理人によって取得することができる。

この場合、本人にとっては自主占有であるが、代理人(預かったり、借りている人)にとっては他主占有にすぎない。

占有の承継(民187条)(取得時効が認められる)

前の占有者の占有権を併せて主張することもできる。ただし、瑕疵も継承する。

■占有権の取得

民法では、引渡(占有の移転)に関して以下の方法が規定されている。

1 現実の引渡(民182条1項)占有権の譲渡は、占有物の引渡しによってする。

2 簡易の引渡(民182条2項)譲受人又はその代理人が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。

3 占有改定(民183条)ある目的物の占有者が、それを手元に置いたまま占有を他者に移す場合をいう。直接占有はそのままに、間接占有が意思表示のみによって移転する。それまで目的物の占有者であったものは、占有代理人(預かったり、借りている人)となる。

4 指図による占有移転(民184条)占有代理人(直接占有者)によって占有権を有する者(間接占有者)が、自己の占有を第三者へ移転する場合に、占有代理人に対して以後はその第三者のために占有すべき旨を命じることによって(間接)占有を移転する方法。

その他、相続や合併によって占有権を取得することもある。(ただし、民185条の規制に服する)

■占有訴権

占有の訴え(民197条)

占有物に侵害があった場合、占有者が占有権の効力としてこれを排除することを請求することができる権利のこと。以下の三つの訴えがある。所有権の効力として認められている物権的請求権の内容にそれぞれ対応する。

1 占有保持の訴え(民198条)

占有者がその占有を妨害されたときは、占有保持の訴えにより、その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができる。

※占有保持の訴えは、妨害の存する間又はその消滅した後一年以内に提起しなければならない。ただし、工事により占有物に損害を生じた場合において、その工事に着手した時から一年を経過し、又は其の工事が完成したときは、これを提起することができない。「占有の訴えの提起期間」(民201条1項)

2 占有保全の訴え(民199条)

  占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。

  ※占有保全の訴えは、妨害の危険の存する間は、提起することができる。この場合において、工事により占有物に損害を生ずるおそれがあるときは、前項但し書きの規定を準用する。(民201条2項)

3 占有回収の訴え「返還請求権」(民200条)

  占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。

  ※占有回収の訴えは、占有を奪われた時から一年以内に提起しなければならない。(民201条3項)

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