物権とは、物に対する直接的、排他的な支配権(物を直接に支配する権利)で物権法定主義という。(物権は、法律で定めたもの以外は認めない。)
物権の種類は、次の10種類(@〜I)に限られる。
● 事実上の支配権
@占有権=権限(法律上の根拠)の有無とは無関係に事実上の支配によって認められる権利。
● 本権としての物権
A所有権=物権の中心で、最も強い物権。
● 他物権 (他人の所有物に対する権利で、他人の所有権を制限するという意味で制限物権ともいう。)
*用益物権(他人の土地の使用、収益に関する物権。)
B地上権 C永小作権 D地役権 E入会権
*担保物権(自己の債権の担保として他人の物を支配する権利。)
イ 法定担保物権(一定の状況の下で当然に成立する権利=法で定めた担保物権)
F留置権 G先取特権
ロ 約定担保物権(当事者(債権者と債務者など)の約束によって成立する権利)
H質権 I抵当権
第2編 物権(平成16法147本編全部改正)
第1章 総則
第175条 物権は、この法律その他の法律に定めるもののほか、創設することができない。
第176条 物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。
第177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
*参考:第三者とは当事者及びその包括承継人以外の者をいう。
包括承継人とは、他の人の権利義務を一括して承継する者をいい、相続人や合併会社がこれに当たる。ただし、一身尊属権は継承されない。包括承継は一般承継ともいわれる。これに対して、個別の権利を承継するものを特定承継人という。
包括承継人は、被承継人が有していた債権債務関係も承継し、これに拘束される。従って、相続に当たっては、必要に応じて相続放棄や限定承認の意思を表明することができる。
第3章 所有権
第1節 所有権の限界
第1款 所有権の内容及び範囲
第206条 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
第207条 土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。
第2款 相隣関係
第209条 土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。
第210条 @他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
A池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖があって土地と公道とに高低差があるときも、前項と同様とする。
第211条 @前条の場合には、通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
A前項の規定による通行権を有する者は、必要があるときは、通路を開設することができる。
第212条 第210条の規定による通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。ただし、通路の開設のために生じた損害に対するものを除き、一年ごとにその償金を支払うことができる。
第213条 @分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。
A前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。
第223条 土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる。
第224条 境界標の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する。ただし、測量の費用は、その土地の広狭に応じて分担する。
第234条 @建物を築造するには、境界線から五〇センチメートル以上の距離を保たなければならない。
A前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から一年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。
第235条 @境界線から一メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。次項において同じ。)を設ける者は、目隠しを付けなければならない。
A前項の距離は、窓又は縁側の最も隣地に近い点から垂直線によって境界線に至るまでを測定して算出する。
第236条 前二条の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。