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<注・法改正>
※「法定相続情報証明制度」平成29年5月29日から開始。法務省

※「相続の規定を見直す改正民法可決成立」平成30年7月6日
主な改正点
1 配偶者居住権 
配偶者が一定期間又は終身、自宅に住むことができる権利で、所有権とは別に自宅建物に登記する。2020年4月1日(水)施行

2 自筆遺言証書
イ 財産の一覧を示す財産目録に限り、パソコンなどで作成したものを添付できる。2019年1月13日(日)施行
ロ 自筆遺言証書を法務局で保管可能とした。この場合、内容を確認する際に家庭裁判所で相続人が立ち会う手続きは不要となる。2020年7月10日(金)施行

遺留分制度の見直し
<遺留分侵害額請求権>
1 遺留分を侵害された者は、遺贈や贈与を受けた者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の請求をすることができる。
2 遺贈や贈与を受けた者が金銭を直ちに準備することができな場合には、裁判所に対し、支払の猶予を求めることができる。
2019年7月1日(月)施行

特別の寄与の制度の創設
相続人以外の被相続人の親族が無償で被相続人の療養看護等を行った場合には、相続人に対して金銭の請求をすることができる。2019年7月1日(月)施行

相続登記の義務化 2024年(令和6年)4月1日(月)施行
相続人は、不動産(土地・建物)を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記をすることが義務になりました。正当な理由がないのに相続登記をしない場合、10万円以下の過料が課される可能性があります。遺産分割(相続人間の話し合い)で不動産を取得した場合も、別途、遺産分割から3年以内に、遺産分割の内容に応じた登記をする必要があります。相続登記の義務化は令和6年4月1日より前に相続した不動産も、相続登記がされていないものは、義務化の対象になります。

相続人申告登記制度 令和6年4月1日から開始。法務省
相続登記の義務を履行するための簡易な方法として新設された制度です。法務局(登記官)に対して、対象となる不動産を特定した上で、(1)所有権登記名義人について相続が開始した旨及び(2)自らがその相続人である旨を申出することとなります。必要な戸籍の証明書(戸除籍謄本等)を添付して、自らが登記記録上の所有者の相続人であることを期限内(3年以内)に登記官(不動産を管轄する登記所)に申し出することになります。相続人申告登記は、申出をした相続人についてのみ、相続登記の義務を履行したものとみなされます。相続人の全員が義務を履行したものとみなされるには、相続人全員がそれぞれ申出をする必要があります。なお、複数の相続人が連名で(話し合って)申出書を作成することで、複数人分の申出をまとめてすることもできます。
 

第5編 相続

法定相続
相続の承認と放棄
遺産分割
遺言の方式
遺留分


法定相続 相続は、死亡によって開始する(民882条)。被相続人の財産は法定された相続人に相続分に従って分けられる。

遺言相続 被相続人に遺言があればそれにしたがって相続財産が分けられる(民902条)。

法定相続人

被相続人の配偶者は、常に相続人となる(民890条)。これと並んで被相続人の一定範囲の血族が次の順序で相続人となる。

 第一順位は相続人の子(ないし孫等の直系卑属)(民887条)。これらの者がいないときは、第二順位として被相続人の直系尊属(父母など)(民889条1項1号)。

 第一順位及び第二順位の者がいないときは、第三順位として被相続人の兄弟姉妹が相続人となる(民889条1項2号、同2項)。

法定相続分   

第一順位の子(ないし直系卑属)が配偶者とともに相続人となるときは、相続分は各2分の1(民900条1号)。

第二順位の直系尊属が配偶者とともに相続人である場合、配偶者が3分の2で、直系尊属が3分の1(民900条2号)。

第三順位の兄弟姉妹が配偶者とともに相続人である場合、配偶者が4分の3で、兄弟姉妹が4分の1(民900条3号)。

 なお、被相続人の死亡以前に相続人となるはずだった子、または、兄弟姉妹が死亡したときは、それらの者の子(被相続人の孫<民887条2項>、おい・めい<民889条2項>)が、それらの者に代わって代襲相続する。なお、被相続人の子には再代襲も認められている(民887条3項)。

※2013年(平成25年)12月11日第900条4号但し書き(非嫡出子の相続分)削除。ただし、2013年9月5日以後に開始した相続について適用する。

相続の承認と放棄

 相続財産には、積極財産(受け継いでプラスとなる財産)と消極財産(受け継いでマイナスとなる財産)がある。

 民法は、相続人が相続財産を受け継ぐかどうかは自らが自由に選択できるとして、次の3つの方法を定める(民915条1項)。

単純承認=積極・消極のすべての財産を受け継ぐ。

限定承認=積極財産の範囲内で、消極財産にあたる被相続人の債務を弁済する方式での財産の承継。

 限定承認をしておけば、たとえ消極財産が多くても被相続人の債務を相続人が負担することはない。

放棄=積極・消極の財産のすべてを放棄する。

相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす(民939条)。

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遺産分割

 相続が開始すると同時に被相続人の財産については、相続人とその相続分が法定され、その相続人全員の共有となる。

 しかし、共同相続人は、原則として、いつでも自由に協議して遺産の分割をすることができる(民907条1項)。

 ただし、分割の方法は、遺言による被相続人の指定があればそれに従う(民908条)。

 分割をしようとする場合に、その協議が調わないか協議することができない場合には、申し立てに基づき家庭裁判所が決定する(民907条2項)。

 なお、この裁判所の決定は、法定相続分を考慮してなされる。

遺言の方式

 遺言は民法で定められている方式に従わなければならない。その方式は、普通方式として3種、特別方式として4種ある。

普通方式(通常の遺言)

1 自筆証書遺言=遺言者がその全文、日付、氏名を自書しこれに押印する(民968条)。

2 公正証書遺言=証人2人以上の立会いのもとで遺言者が遺言の趣旨を公証人に口頭で述べ、公証人がこれを筆記する方式で作成する(民969条)。

3 秘密証書遺言=遺言者が自分で書いたか、または、他人に書いてもらった証書に署名・押印して、その証書を封じ、証書に用いた印章でこれに封印し、その上で遺言者が公証人及び2人以上の承認の前に封書を提出して、自己の遺言である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申し述べる方式で作成する(民970条)。

特別方式(普通方式の遺言が困難な場合のみ認められる)

1 一般危急時遺言(臨終のとき)

2 難船危急時遺言(船が遭難したとき)

3 一般隔絶地遺言(伝染病のとき)

4 船舶隔絶地遺言(航海中のとき)

遺留分  

遺言により誰に対しても財産を自由に遺贈することができるが、遺族の生活の保障も無視するわけにはいかない。そこで民法は遺留分の制度を設け、兄弟姉妹以外の相続人である配偶者、子及び直系尊属のために遺産の一部をとどめておくこととした。

民第1042条(遺留分の帰属及びその割合)

1 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。

一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一

二 前号に掲げる場合以外の場合   二分の一

2 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第九百条及び第九百一条の規定により算出したその各自の相続分を乗じた割合とする。

民第1043条(遺留分を算定するための財産の価額)

1 遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の金額を控除した額とする。

2 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。

民第1044条・第1045条は省略

民第1046条(遺留分侵害額の請求)

1 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。

以下省略

※民法改正により、2019年(令和元年)7月1日施行。ただし、2019年(令和元年)6月30日以前に相続が発生した場合には、改正前の「遺留分減殺請求権」が適用される。

※2019年(令和元年)7月1日民法改正により、旧法第1028条から第1041条まで削除。

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